「努力が不要」ってどういうこと?
「努力が不要」と聞くと、「だらしない生活を推奨しているんじゃないか」とか「ニートを推奨してるんじゃないか」と思うかもしれません。
タイトルだけで読むのをためらってましたが…読んでわかりました。この本は、今まさにがんばっている人達に読んで欲しい本です!
努力というのは、「がむしゃらにがんばっている状態」のようなもの。でも、それでは体力が消耗してしまって目標が叶わない可能性があります。
それよりも「①目的(目標)の明確化 ②戦略の立案 ③実行」をしましょう、ということ。
③の実行をがんばるだけなので、目的と戦略がわかっていれば努力が報われるようになります。
江戸時代は努力しないことが粋だった
江戸時代は努力しないことがカッコイイという時代。本を買ったり芝居小屋に行ったりと遊ぶことが粋だったのです。
その意識が変わったのが明治維新以降のこと。戦争が始まり、さらに無駄な努力を強いることが広まりました。第二次世界大戦中はとくにそうですね。物資もないのに戦争に行く。その果てに命を粗末にする神風特攻隊があります。
無駄な努力の末には絶望があります。戦後も無駄な努力の文化が残り、努力を推奨し、努力をしていった末に貧困が待っています。
お金の意味だけの貧困ではなく、心の貧困が待ち受けています。
努力家は才能を潰す
「出る杭は打たれる」とよく言いますが、実際に若くして才能のある方や成功している方はいろんな形で潰しの攻撃がかかります。なぜだろうか?と日頃思ってましたが、この本を読んでようやくわかりました。
「才能のない人はがんばってがんばって努力を重ねてのし上がってきた、そんな人は才能がある人を見抜き潰しにかかる傾向が強い」
と書いてありました。これはまさにそう思います。手技療法の業界で、プロフィールの経歴に大量の資格や参加したセミナーやディプロマを書いている人がいます。そういった人は自分より優れている能力が一部でもあると思うと潰しにかかります。ただ人間性の低い人だと思ってましたが、努力を重ねたからこそがんばってない人のことが気にくわないのでしょう。
人を尊重し、才能を認めてこそ社会での努力が報われるというもの。まず自分から相手を認める必要があります。そうじゃないと努力を重ねたのに周りから認められないという状態へおちいります。結果的に報われない人の出来上がり。どんなにがんばっても「人間性の低い人」で終わります。
この潰しにかかるのは、日本人特有のものでもあります。
脳内のセロトニントランスポーター(幸せを感じる物質を受け取るところ)の数が少ないと遺伝子研究でわかっています。遺伝的にこのような仕組みになっていて、心配性で努力をしないと不安を感じる人が多いようです。
でも、遺伝子のせいにしてばかりではいけません。解決方法がこの本には載っています。
「合理的」「効率的」というものを常日頃考えている人は、他人に冷たく当たってしまうことがあります。この本を読むとイライラする原因が自分自身にあるということがわかります。心を豊かにするには、非合理的なことも必要です。つまり「遊び」が大切。ブレーキだってハンドルだって「遊び」が必要なように人生にも「遊び」が必要です。
死の間際に思うこと
人生最後の時を過ごす緩和ケアに携わった方によると、「あんなに一生懸命がんばらなくても良かった」という声が多いそうです。悔いの無いようがんばったはずなのに、人生の最後に頑張ったことを後悔するなんて衝撃を受けました。人生のゴールは「楽しかった」「充実した人生だった」と言って終わりたい。
そのためには、余裕を持った生き方をすることが大切です。遊びも息抜きも大切。がんばる必要があるときは目的と戦略をはっきりさせてからがんばる。この本によって、自分ががんばりすぎていたことを知りました。もっと好きなこともしていこうと思える本でした!
心の健康という意味ではかなり重要な本です。
努力不要論――脳科学が解く! 「がんばってるのに報われない」と思ったら読む本
著:脳科学者・医学博士 中野信子